バイオフィルムとは 歯科や自宅で行う除去方法

歯科治療や日々の口腔ケアで耳にすることが多い「バイオフィルム」。それは私たちの口の中で、歯表面や舌の表面に形成される微生物の集団を指します。しかし具体的には何なのでしょうか?今回はバイオフィルムについて、その形成から除去方法までを詳しく解説します。

バイオフィルムとは

バイオフィルムとは、複数の微生物が集まって作り出す、保護膜のようなものです。これは口の中に常在するバクテリアが、お互いに接着し、歯や舌などの表面に付着することで形成されます。バイオフィルムは、時間とともに成長し、成熟すると厚みを増して歯垢(プラーク)と呼ばれるものになります。この歯垢が、虫歯や歯周病の原因となるのです。歯ブラシだけでは到達できない部分、特に歯間部や歯茎と歯の接触部(歯肉溝)に存在するバイオフィルムを完全に除去することは難しいです。

バイオフィルムの除去方法

バイオフィルムを防ぐ最も効果的な方法は、日々の適切な歯磨きです。歯ブラシでしっかりと歯を磨くことで、新たなバイオフィルムの形成を防ぎ、すでに形成されたものを除去することができます。特に重要なのは、歯間部分の清掃です。ここはブラシが届きにくく、バイオフィルムが残りやすいため、歯間ブラシやフロスを使用しましょう。バイオフィルムは、その名の通り「膜(フィルム)」のような構造をしているので、単にうがいをしただけではその内側の細菌の居場所までは届かず物理的に膜を破って破壊していくか、薬品で化学的に膜を破壊していくかで除去するしか方法がありません。

口腔ケアの補助として、フッ素配合の歯磨き粉や口腔洗浄剤の使用も有効です。これらはバイオフィルムの成長を抑え、歯を守る役割を果たします。さらに、歯科医師や歯科衛生士が行うクリーニングも重要な役割を果たします。定期的な歯科診療を受けることで、自宅でのケアだけでは取りきれないバイオフィルムをしっかりと除去し、口腔内環境を健康に保つことができます。

歯科で行うバイオフィルムの除去処置

歯科では、バイオフィルムに対する管理において非常に重要な役割を果たします。以下に、主な処置とケア方法について説明します。

スケーリングとルートプレーニング

これらは歯科医師または歯科衛生士によって行われ、バイオフィルムと歯石(硬化したバイオフィルム)を除去するプロセスです。スケーリングは主に歯と歯茎のラインの上に集積したプラークと歯石を取り除きます。一方、ルートプレーニングは歯茎のラインより下、歯の根の部分に付着したバイオフィルムと歯石を除去します。

フルーライド治療

バイオフィルムによって歯が虫歯になりやすい状態の場合、フルーライドを塗布することで歯のエナメル質を強化し、酸の攻撃に対する耐性を高めます。

抗菌療法

バイオフィルムの除去では、時には抗菌口腔洗浄液の処方や、重度の歯周病の場合には抗生物質の使用を推奨することがあります。これらは、特にバイオフィルムによって引き起こされる感染症の治療に有効です。

歯磨きとフロスの使い方の習得

歯科医療の専門家は、適切なブラッシングとフロッシングの技術を指導し、患者が自身でバイオフィルムを効果的に管理できるようにするための教育を提供します。

このような処置やケアにより、歯科医療の専門家はバイオフィルムを管理し、その影響が口腔健康に及ぼすリスクを最小限に抑えます。

バイオフィルムはリステリンやモンダミンなどの口腔洗浄液で除去できる?

口腔洗浄液はバイオフィルムに対する予防措置の一部として効果的であり、特に歯と歯の間の奥の方や扁桃の付近のエリア、舌部分など、歯ブラシが届きにくい場所に対する補助として有効です。リステリンやモンダミンなどの一部の洗浄液には抗菌成分が含まれており、これらはバイオフィルムの形成を抑えることができます。

ただし、口腔洗浄液だけを使用することでバイオフィルムを完全に除去することは難しいとされています。洗浄液は、特に歯の表面や歯と歯茎の間など、ブラシが届きにくい場所の補完的なケアに有用ですが、歯磨きやフロッシング(歯間清掃)の代替にはなりません。そのため、口腔洗浄液を使用する際には、これを日々の口腔ケアの一部として位置づけ、適切なブラッシングやフロッシングと併せて行うことが推奨されます。また、定期的な歯科診察も忘れずに行い、専門家によるケアを受けることも重要です。

バイオフィルムを放置するとどんな影響がある?

バイオフィルムは、口腔内のさまざまな問題の主な原因となります。バイオフィルムが歯の表面に付着し続けると、歯垢(プラーク)となり、その中の細菌が食べ物から得た糖を酸に変換してしまいます。この酸が歯のエナメル質を侵すことで虫歯が引き起こされます。

さらに、歯垢が歯茎の周りに溜まると、歯茎が赤く腫れたり出血しやすくなる状態、つまり歯肉炎を引き起こします。歯肉炎が長期間放置されると、歯肉と歯の間にポケットが形成され、細菌がさらに深く進入します。この状態が進行すると、歯槽膿漏(重度の歯周病)が発生し、歯の骨を破壊し、最終的には歯の喪失につながる可能性があります。

まとめ

バイオフィルムには口臭を引き起こす細菌も含まれているため、口臭の原因にもなります。日々の口腔ケアによりバイオフィルムを適切にコントロールし、その悪影響を防ぐことが非常に重要です。定期的な歯科診療を受け、適切なブラッシングやフロッシングを行い、口腔洗浄液などを使用することで、バイオフィルムを効果的に管理することができます。

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